「日本型標準加速化モデル」と
ファインバブルISO戦略活動の現状及び今後の展望

私たちはISOで定義された名称「ファインバブル」の利用を進めます。定義が不明確な「ナノバブル」は使用しません

■座談会実施日

2024年6月7日(金)

■出席者(敬称略)

目次

  1. 1.国の標準化政策とその背景
     市場戦略策定に有効なツールが標準化で今後、戦略活動が重要に
  2. 2.ファインバブルでの基盤的活動
     ファインバブル国際標準化への取組と成果

     学会でもファインバブル技術が認知され、学会連合設立や標準化活動への参加も進む
     FBIAでは標準化の戦略利用で技術の信頼性を確保、定義の不明確なナノバブルを一掃してグローバル産業創成を日本発で実現
     ファインバブル業界の取組の評価
  3. 3.戦略的取組の内容
     カーボンニュートラルもファインバブルの標準化で加速化
     ファインバブル計測研究に支援を、大学での標準化教育も推進
     ファインバブルの応用開発は海外連携が重要、海外と連携できる人材の育成も視野に
     標準化人材の育成・確保が課題、経産省では新政策も
  4. 4.今後の規格戦略利用と課題
     ファインバブル呼称へのISO規格戦略利用とグローバル社会での認知向上への万博2025活用

     業界信頼性向上のためのISO規格の活用
     ナショプロでのISO規格制定の重要性
     政府全体での標準化の取組

笠井: 皆様にはご多忙のところ、ご出席賜りまして、ありがとうございます。本日は経産省ご提案の「日本型標準加速化モデル」の内容をご紹介頂いた上で、ファインバブル国際標準化のこれまでの歩みのレビューと今後の国際標準化の戦略的方向性、課題解決の方策や展望などを探っていきます。まずは経済産業省西川課長からご説明お願いします。

1.国の標準化政策とその背景

市場戦略策定に有効なツールが標準化で今後、戦略活動が重要に

西川: 「日本型標準加速化モデル」は、2023年6月に日本産業標準調査会(JISC)基本政策部会で取りまとめられました。

従来のグローバル市場におけるマーケット構造は、「価格」と「品質」の掛け合わせで、市場が決定されるようになっていました。すなわち、価格が安く、品質が良ければ製品は売れ、消費者に受け入れられる環境にありましたが、近年のグローバル市場は、供給側・需要側双方の変化に直面しています。

供給側では、DX の活用、技術水準の均一化等を背景に、類似品質の製品を作りやすく、優位性がキャッチアップされるまでのスピードが速まるとともに、生産工程の合理化、人件費を含めた生産コストが極端に低い国の登場などにより、「価格」×「品質」だけで優位性を保持し続けることが、特に先進国においては困難な状況になってきていると言えます。

一方で、需要側では、価値観の多様化等により、製品やサービスの「価格」や「品質」のみではなく、これら以外の新たな付加価値が購買行動を決定する要素となる場合も増えてきています。消費者が、例えば、デジタル、人権、サステナビリティー、ダイバーシティー&インクルージョン、SDGs等の付加価値に着目した製品・サービスを購入したいと考えるケースが多く見られるようになっているのです。

こうした供給側・需要側双方の変化の中にあって、自社の製品等を確実に市場に展開するためには、「価格」や「品質」に加えて、「新たな価値軸」が必要となります。そうした価値軸を生み出し、それを市場につなげることこそが、今日的な意味での「市場創出戦略」です。

このような、新しい価値軸・価値要素を取り込む市場の戦略を考える際に有効なツールが標準化です。

「価格×品質」でマーケットが決まっていた時期から主として取り組まれてきた、社会・消費者の安全・安心の確保、基礎的な部品の仕様や検査方法、組織・事業の運営方法等のマーケットや産業の基盤を整える標準化活動を「基盤的活動」と呼びます。

これに加えて、市場創出に資する経営戦略上の標準化活動が「戦略的活動」です。戦略的活動は、商品企画、研究開発、マーケティング、投資等の戦略と一体的に進めることが必要です。また、SDGsなどの社会要請を、価値に転化する標準化活動もここに含まれます。

企業の経営戦略と一体的に展開する戦略的活動をこれまで以上に拡大し、基盤的活動と合わせて取組を加速化していくことが、我が国における標準化活動の在るべき姿であり、我々は、これを「日本型標準加速化モデル」と提案しています。

基盤的活動は今後も従来どおり、標準化活動の中核です。このように産業の基盤となる基盤的活動の知識や経験を前提としつつ、それらをも包摂する形で経営戦略上の戦略的活動があります。

SDGsなどの社会の要請を価値に転換していく「戦略的活動」の拡大・加速の必要性を認識することが重要ですし、基盤的活動と戦略的活動を両立させていくことが求められます。

2.ファインバブルでの基盤的活動

ファインバブルでの基盤的活動ファインバブル国際標準化への取組と成果

矢部: (一社)ファインバブル産業会(FBIA)は国際標準化を通じたファインバブル産業育成をテーマとして2012年に設立し、翌年にISOにファインバブルのTC(技術委員会)を日本提案で設立しました。

その後、2017年に世界初の「ファインバブル」定義規格を日本提案で発行しました。

それ以降、日本主導で多くの規格を提案し現在までに31の規格が発行し、そのうち8割が日本提案の規格で、日本が世界をリードし続けています。日本は、ISO/TC 281(ファインバブル技術)の国際幹事と事務局(JISC)の役割を担っています。

FBIAでは、「規格」作りと規格利用の「認証」制度構築を一体運営で行う戦略的標準化に取り組んで来ています。2015年の「ファインバブル登録制度」に始まり、FBIA規格整備と共に2019年に「認証制度」も開始しました。これにより、ファインバブル産業の信頼性向上に大きく寄与したと考えています。

更に、規格化では2019年、他の業界に先駆けてSDGsをタイトルに入れた世界初の規格を提案し、2021年発行し、ファインバブルでもSDGs貢献をアピールすることが出来ました。

ファインバブルの効果分類面での規格化にも取り組んでいます。高速道路のパーキングエリアのトイレ洗浄でのファインバブル利用と植物の成長促進に使用されるファインバブルの粒径/密度は異なるため、ファインバブルの発生性能を粒径/数密度で評価する基本規格も作成しました。これによりアプリ分野が登場するための基盤が出来ました。

この様に、ファインバブル分野では標準化の進め方にも当初から戦略を持って取り組んできています。

学会でもファインバブル技術が認知され、学会連合設立や標準化活動への参加も進む

寺坂: 私は、FBIA設立以前から大学で“泡”を専門として研究に取り組んできました。2012年頃まで微細な気泡には決まった呼称は無く、自由気ままに“ナノバブル”のように呼ばれていました。その性質や効果の報告はまちまちで、目視できないうえに機器計測技術も発展途上だったので、学術界でも怪しさや危うさがありました。

その後、2010年頃から相次いでウルトラファインバブル計測技術が登場し、ウルトラファインバブルの存在が学術界でも認知され、マイクロバブルとともにウルトラファインバブルの各種性質も研究によって徐々に明らかになってきました。

この様な動きの中、大学ではファインバブルに関して蓄積された実験結果や学会発表された仮説や理論をもとに、FBIAがけん引する国際標準化のための基礎データ提供や効果の理論的説明を行っています。

ファインバブルをコアとする学会である“ファインバブル学会連合”も世界で初めて日本で創設されました。これまで“ファインバブル学”のような学問体系が無かったので、気泡工学、混相流体工学、反応工学、超音波工学、実業界、などからファインバブルに強い関心をもつ5つの有力な学術研究団体が加盟し、2015年にファインバブル学会連合(FBU)が設立されました。

FBIAはFBUにも加盟し、学会活動を通じた標準化活動振興にも取り組んでいます。2023年度からスタートした「ファインバブル学術表彰制度」ではISO標準化に準拠した優れた研究の発表者を表彰しています。

FBIAでは標準化の戦略利用で技術の信頼性を確保、定義の不明確なナノバブルを一掃してグローバル産業創成を日本発で実現

藤田: FBIAは国際標準化による日本発産業創成を目的に設立しており、まさにこの15年間の歩み自体が、西川課長ご説明の「日本型標準加速化モデル」の具現化です。

寺坂先生ご指摘のように、2000年代は、元々ナノバブル水という、①計測技術が確立していないのに、また②どの程度の量の気泡が含まれているのか計測されていないのに、しかも③効果効能が全く科学的に証明されていないのに、高価なまがい物製品も多くナノバブル製品として販売されている、秩序のない、無法者がたくさんいる業界でしたので、我々は規格創成と、規格に基づく客観的な認証制度の一体運用でファインバブル技術の信頼性を確保して日本発グローバル展開する戦略を描きました。

背景には、例えば牛肉の業界で赤身の中の霜降り度合いで等級を設定、認証したり、また光触媒での規格に基づき科学的にしっかりとした認証の成功事例を知ったことがあります。

FBIAでは認証の第一ステップとして「登録制度」から開始し、その後、FBIA規格での認証、最近ではISO規格でのISO認証へとレベルを上げた認証制度を構築し、信頼性を保証する制度として確立されつつあります。ですので、ファインバブル製品は、ほとんどが正当性を謳うことができ消費者が納得して利用できておりますが、未だにナノバブルという名称を利用する製品は、認証の活用を享受できないわけですから、不安な怪しい製品と市場からは受け止められています。これこそが、西川課長が言われた「日本型標準加速化モデル」で最も重要な、国際標準化こそが、新しい価値軸・価値要素を市場戦略として推進する有効なツールとすべき点であり、「ISO国際標準となったファインバブル」の名称で、日本企業や団体、大学が産官学で一体となって推進すべきと考えています。

その際重要となる産業創成面での戦略利用ですが、我々がファインバブルの国際標準化を始めるに際してベンチマークした成功事例は、機械安全分野のISOやIECが連動した国際規格体系群です。1990年代から、機械安全規格は①基本規格②グループ規格③個別機械の規格の3階層で多くの規格群を作成し、規格に応じて多くの関連事業がインキュベーションされ、産業創成の典型的な成功例となりました。

我々は、ファインバブルでも同様に①基本規格②計測規格③応用規格の3階層での規格審議/創生体制を構築して規格を作り上げ、今後、機械安全分野と同様に産業群が育っていくことを目論んでいます。

ファインバブル業界の取組の評価

西川: 「日本型標準加速化モデル」では、「基盤的活動」を標準化活動の前提として持続的に維持しつつ、市場創出ツールとしての「戦略的活動」を、これまで以上に拡大していくことを提案していますが、ファインバブル分野では、FBIAを標準化の活動拠点として、基盤的活動の着実な実践とともに、産業創生面で標準化を戦略的に活用されていて、経産省としても大変心強く感じています。今後、このような取組の成功事例を横展開できればと考えています。

3.戦略的取組の内容

笠井: 基盤的活動のご紹介に続き、FBIAでの戦略的活動を皆様からご報告頂けたらと思います。まずは、ISOで国際審議でもご活躍中の矢部様からお願いします。

カーボンニュートラルもファインバブルの標準化で加速化

矢部: 私は、標準化の戦略的活動でファインバブルの応用分野拡大に取り組んでいます。

ISO/TC 281ではWG3(応用分野(3階層規格の最下層))のコンビーナを務めており、成果普及も含め、FBIAでセミナーや国際シンポジウムを10年で20回以上行った他、事例研究会などで基礎メカニズムの勉強会も実施し、応用分野の拡大を図ってきました。

特に、近年特に注力しているのが「カーボンニュートラル」です。CO₂固定化の一方法として、カルシウムとの反応にファインバブルを利用し、効率的に炭酸カルシウムを生成する試みで、たとえば、セメント業界ではセメントに含まれるカルシウムをターゲットにセメント産業で発生するCO₂を吸収固定化するものです。

国の推進するグリーンイノベーション基金でも、このプロジェクトが動き出し、我々もこの技術を国際規格まで持っていこうと考えており、グローバル課題解決に標準化を戦略利用する可能性は広がっています。

ファインバブル計測研究に支援を、大学での標準化教育も推進

寺坂: 「日本型標準加速化モデル」の戦略的活動をファインバブル分野で推進するには、未だ不明な性質の計測や得られた効果・効能を理解するための機器や技術が必要です。矢部先生のカーボンニュートラルの例でもCO2ファインバブルの各種計測技術開発とそれを基にした規格化が大きなテーマです。新しいアイデアによる計測技術の発明や開発は学術界が担っていますが、大学等では 研究費や標準化用のデータ取得費用が不足しており、「日本型標準加速化モデル」実現には国からの研究費支援が必須です。

FBIAではファインバブル技術を牽引する人材育成も担っています。大学および産業界からの講師による教育事業として「ファインバブルアカデミー」を創設し、ファインバブルのエキスパート人材を輩出しています。さらに慶應義塾大学では私自身の講義の中でファインバブルを題材として国際標準化に関する教育を実践しています。本戦略活動を成功に導くには、研究と教育の両者の推進が重要です。

ファインバブルの応用開発は海外連携が重要、海外と連携できる人材の育成も視野に

藤田: 私からは、戦略活動におけるグローバル連携やその人材育成の重要性をお話ししたいと思います。

ISO/TC 281を日本提案で発足した2013年時点では、ファインバブル技術は日本発の技術で、日本独占の状況でした。しかし、ISO/TC 281会議や、様々なシンポジウムや展示会を日本でのみならず、英国、ドイツ、韓国、シンガポール、タイ、中国、ロシア、オーストラリア等で実施してきたことで、最近では多くの国がファインバブル技術を導入し始め、日本との連携にも一層期待が高まっています。

本年2月にはISO/TC 281を米国開催し、今までで最も熱心で議論の内容のレベルが高まった会議であり、この10年以上に及ぶ取組の歴史に対して感無量と感じた次第でした。 とりわけISO会議を開催したハワイでは、農産品の食料自給率15%しかなく、農産品のほとんどを輸入に頼っており、ハワイ大学での施設園芸を見学、ファインバブルの農業応用の成功事例の説明を受けましたが、もっと日本と連携して推進したいという要望も多数聞きました。

またハワイ会議では、おそうじ本舗という企業の若い女性研究者の方が新分野での国際標準化案を発表されるなど、新たな人材も育ってきており大変頼もしく、今後数年間かけてそういう海外連携できる人材育成も非常に重要と思います。この様にファインバブル技術では未だに日本のプレゼンスが非常に高く海外連携が求められている分野ですので、今がファインバブル技術の海外展開の絶好機だと思います。

標準化人材の育成・確保が課題、経産省では新政策も

西川: 寺坂先生からの御指摘にもあったように、「日本型標準加速化モデル」の実現に向けては、標準化人材の育成・確保が課題です。

企業では、これまで基盤的活動を中心に標準化活動に関わってきた方々がベテランと呼ばれるような年齢層に差しかかっています。そうした方々の御経験や御知見の蓄積を若年層に引き継ぎ、若手人材を育成していく取組が必要です。

基盤的活動では、従来、規格開発、原案作成、国際会議での交渉を行う「規格開発・交渉人材」がメインで御活躍くださっていました。今後、戦略的活動を加速化していく際に必要となる人材は、「規格開発・交渉人材」に加えて、制定された規格の活用のための地合い作りに取り組む「活用・普及人材」と、標準化を市場創出のツールとして活用し、経営戦略としての標準化戦略を立案・実行していく「標準化戦略人材」です。このように、標準化人材を層の厚さや年齢の幅も広げて確保・育成していくことが重要です。

経産省では、我が国の標準化人材の情報を可視化することで、企業や団体において、外部人材の活用を促進し、また、我が国の標準化人材のプレゼンスを向上させることを目的として、2024年6月3日から標準化人材のデータベースである「標準化人材情報Directory」をホームページで公表させていただいています(https://standirectory.go.jp/ )。

足下では、「規格開発・交渉人材」が中心で150名程度が登録されている規模ですが、今後、「標準化戦略人材」や「活用・普及人材」にも登録を広げていく取組を続けていきたいと考えています。

更に、企業と大学等が共同で実施する研究開発について、標準化と知的財産を一体的に活用する戦略(オープン&クローズ戦略)の策定・活用を促進するための制度を創設しました。具体的には、大学・研究機関と企業が共同で研究開発をする際に、その研究開発成果の社会実装、市場化を見据え、オープン&クローズ戦略を検討・構築する計画(「特定新需要開拓事業活動計画」)を国に申請していただき、その計画を国が認定した場合に、認定された企業・大学等の活動に対してINPIT、NEDOによる助言支援等を行うという内容です。ファインバブル関係者の皆様もぜひこの新しい制度を御活用いただければと思っています。

笠井: 戦略的取組に際し、西川課長から実現化には人材育成・確保が重要でそのための支援策を用意されているとの紹介がありました。

特に、標準化の基礎となる研究開発の初期段階から社会実装、市場化を推進する支援が創設されたとのことで業界でも活用を進めていきたいと思います。

次に、FBIAでのISO規格の戦略利用の構想や国の支援策について意見交換したいと思います。

4.今後の規格戦略利用と課題

ファインバブル呼称へのISO規格戦略利用とグローバル社会での認知向上への万博2025活用

藤田: 冒頭にも申し上げましたが、ファインバブルのISO規格の利用を通じ業界の信頼性向上を図る取組の現状と今後の展望についてお話しします。

FBIAでは、ISO規格で、呼称「ファインバブル」「ウルトラファインバブル」を定義しました。これにより「ファインバブル」の用語が社会で適切に使用され、ひいてはナノバブルといういつまでも定義が明確化されていない「まがい物」に頻繁に使用される呼称が排除され、ひいては業界全体の信頼性が向上することを戦略にしてきました。

このため、FBIAでは、2014年に「エビデンス宣言」を発行し、ISOで計測技術に裏付けされた呼称の定義を行い、その定義でサイズ等が明確に規定された「ファインバブル」「ウルトラファインバブル」の用語を生産者、消費者共に広く使用してもらい、世間での「ファインバブル」自体の信頼性を向上させる構想で進めてきています。

このような節目のタイミングで大阪万博が2025年に開催されますので、先ほども申し上げましたが、これがファインバブル技術・製品の海外展開やISO規格のグローバル浸透の最大のチャンスであり、私としては、万博で国際標準化をテーマとし、ファインバブルの将来性と日本発の新たな「価値軸」をアピールしていきたいと考えています。

現在、国連専門機関のWHOやILO、また多数の機関や企業と「安全・健康・ウェルビーイング」をテーマに万博で大きなイベントを推進するGlobal Initiative構想の責任者として万博協会ともやりとりしています。ファインバブル技術はWell-Beingテクノロジーとも言われ、「安全・健康・ウェルビーイング」の中核技術の一つとして万博を機に、日本技術のグローバル展開の起爆剤にするのも良いのではと考えており、これらに対しても是非経産省からのご支援よろしくお願いいたします。

業界、消費者共にISO規格を信頼し、世界で使用していくことが重要で、ISO規格の使用促進がキーポイントになっています。FBIAでは、会員が率先してISO規格の使用を進め、信頼性向上を図ってきていますが、経産省では、この様なISOの戦略利用活動をどの様にお考えでしょうか?

業界信頼性向上のためのISO規格の活用

西川: 規格は作って終わりではなく、その活用までを含めた取組が「標準化活動」でもあります。規格の積極的な活用の推進を通じて、業界/技術の信頼性を向上させていく取組は大変重要だと思います。

FBIAの取組が着実に進み、規格の活用も含めた標準化活動の成功事例となっていくことを期待します。また、万博で国際標準化シンポジウムや展示会を開催し、広く世界へ発信することは素晴らしいアイデアと思います。

ナショプロでのISO規格制定の重要性

矢部: ISO規格の使用を技術開発の現場で見ますと、その重要性が充分理解されていない面も多々見受けられますので、まず、国が先導するナショプロの技術開発の段階から、国際標準を作っていくことが大事であると思っています。ウルトラファインバブルによるカーボンニュートラルの推進に関係するナショプロも、3つくらいスタートしていますので、ナショプロが率先して、「ウルトラファインバブル」の用語を使用する国際標準を作り上げて行きたいと考えています。

政府全体での標準化の取組

寺坂: 大学で行う標準化に関する教育では、ISO活用事例などをテキスト等にまとめたり、講義用のビデオ作成を行います。まず日本の省庁でファインバブル技術の標準化例の認知が広がれば自然と社会に普及が広まると期待しています。

矢部: 私は、内閣府のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)研究開発プログラムで農水省関係プロジェクトに参加しISOの農水テーマの規格策定をしました。また、ISOではインテリジェント農業分野の規格活動に参加するなど、農水省関連の標準化に関わっており、最近では農水省の国際標準化の取組が加速化しているのを実感しています。

今後、内閣府の取組でこの流れが更に強まっていくことを期待します。

西川: 来春を目途に、内閣府の知的財産戦略本部で国際標準化戦略を策定する予定となっています。ここでは、経済安全保障・先端技術・環境ルール等の国際標準化活動の代表的な重点領域を定めた上で、国際標準化に対する官民の取組を強化していくための戦略を策定すると認識しています。こうした取組も機に、我々も省庁間の連携を強化していきたいと考えています。

笠井: ありがとうございます。FBIAが取り組んでいる標準化の戦略的取組が他業界、他省庁にも拡がり始めている様ですね。政府の方でも省庁を超えて標準化の戦略利用の支援が加速化することを期待します。

また万博での、ISO/TC 281会議やFBIAイベント開催は2025年7月であり、ちょうど1年後に迫ってきております。是非、SDGs、ウェルビーイング、カーボンニュートラルといった重要なテーマでファインバブル技術が貢献し、また一層の産業発展を推進し、「日本型標準加速化モデル」の重要な事例であることを海外と連携しながらFBIAとして最優先テーマとして取り組んで参ります。 本日は皆様ありがとうございました。